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瀬々敬久
(ゼゼ・タカヒサ)
プロフィール |
| 1985年自主制作映画「ギャングよ、向こうは晴れているか」で高い評価を受け、ピンク映画に助監督として参加。1989年「課外授業・暴行」で商業映画デビュー。
以後≪ピンク四天王≫の一人として活躍、圧倒的な支持を受ける。ロッテルダム映画祭、ヴィエンナーレ映画祭等で上映され、海外でも高い評価を得る。佐藤寿保、サトウトシキ、佐野和宏とともに、ピンク四天王と呼ばれる。1997年より一般劇場映画に進出する。代表作は『DOG
STAR ドッグ・スター』『MOON CHILD』。最新作『サンクチュアリ』は今秋、ユーロスペースで公開 |

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◆ピンク映画監督とAV女優
高崎 どうもこんにちは。映画書籍の編集などをやっている高崎と申します。よろしくお願いします。今日は瀬々監督と夜桜さんの対談ということで、僕は司会進行というふうに考えてますが、お二人とも初対面ですよね。夜桜さんは、先日、『西瓜』のDVDの特典映像用にインタビューさせていただきましたが、今日は、改めて『西瓜』という映画に出演されたいきさつなどを含めて、お話をお聞きしたいと思います。瀬々監督には今回、「香港電影通信」でツァイ・ミンリャン監督の二作品について、作品評を書いていただきましたけど、以前に、ツァイ・ミンリャン監督とはお会いになっているそうですね。
瀬々 『ふたつの時、ふたりの時間』がユーロスペースで公開されたときですね。知り合いに「ツァイ・ミンリャン監督の映画はいいよ」と以前からずっと言ってたら「じゃあ、今度会わせてやるよ」と言われまして。東京国際映画祭の時に、雑誌の対談で会ったんですが、僕が一方的に質問していたというような状況でした。
高崎 もともとのツァイ・ミンリャン監督の作品との出会いというのは何ですか。
瀬々 『愛情萬歳』という映画を、今はもうない六本木のシネ・ヴィヴァンという映画館に見に行った時ですね。これはすごいと思いまして、それからユーロスペースで『青春神話』の再映を見まして、それ以来ずっと映画館で見続けるようになったという感じです。
高崎 夜桜さんは、『西瓜』の出演のオファーがあったときに、ツァイ・ミンリャン監督のことはまったく知らなかったそうですね。
夜桜 失礼な話ですけれど、全く知らなかったです。『西瓜』に出演させていただいたきっかけは、私が二年程前にAVの事務所に所属していたときに、たまたま書類で選ばれたんです。その映画に出るまでは監督の名前すら知らなくて、映画に出てから監督のことを知りました。
高崎 ツァイ・ミンリャン監督の話によると、夜桜さんは二千人のAV女優のリストから選ばれたということですよね。
夜桜 そうみたいですね。私もツァイ・ミンリャン監督からその話を聞いたんです。映画の話をAVの会社から聞いた時には、私もAVを始めて間もない頃だったので、まさか私が選ばれるとは思わなかったので、びっくりしました。
高崎 瀬々監督は1989年にピンク映画でデビューされたということですが、AVの現場はご存知なんですか。
瀬々 昔、「ビデオ安売王」というメーカーがあったんですが、そこからドラマ仕立ての作品を二本ほど、同じキャストで撮ったことがあります。
高崎 それは、ピンク映画でデビューする前ですか。
瀬々 いえ、デビューした後です。AVがピンク映画と全然違うところは、そういうシーンになるとどうしても「お任せ」になるところですね。映画だと一応アクションのように「こういうふうに動いて、こうやってくれ」と言うんですが、ビデオだとやはり、ドキュメンタリーというか、演出家はモニターを見ているだけでしかない。そこが全然違うな、という印象があります。
高崎 夜桜さんも突然、台湾で映画の現場に行って、AVの現場とはだいぶん違った印象をもたれましたか。
夜桜 そうですね、私に決まったとマネージャーから聞いたとき、私は台湾というところに行った事もなく、それまで飛行機にも乗ったことがなかったんです。パスポートも持っていなかったので、まず最初にパスポートの準備をして、という感じで。「映画を撮る」というのはその時には聞かされておらず、「AVの撮影を台湾でする」と聞かされていました。
◆イメージ通りだった夜桜すもも
瀬々 書類選考で決めて、そのあと面接はなかったんですか。
夜桜 なかったですね。
瀬々 さすがツァイ・ミンリャン監督、勇気ありますね。すごい人が来たらどうするつもりだったんですかね。
夜桜 そうですよね。書類っていうのはいくらでも作り変えることできますよね。
瀬々 僕もそういう経験ありますよ。「これかいっ!」っていうことがたまにありますからね。写真はどれだけでも嘘をつけますから。
夜桜 加工するというのも、この業界ではありますよね。
瀬々 充分ありますね。
夜桜 私も書類だけを見て選ばれたと聞いて、すごい監督だな、とびっくりしてしまいました。
瀬々 実際に会ったとき、ツァイ・ミンリャン監督はどういう顔をしていましたか。ほっとしてましたか。
夜桜 ほっと、というか、イメージ通りだったみたいでした。そういう意味で、私もなんと答えたらよいのか分からなかったです。
瀬々 イメージ通りというのは、どういうイメージだったんですかね。
夜桜 映画のキャストとして、ということです。ストーリーの中でぴったりだ、ということを聞いたんですけど。「あなたではダメです」と言われて返されても、立場ないですよね。
瀬々 チェンジと言われてもね。行ったらいきなり撮影だったんですか。
夜桜 そうですね、時間が押し迫ってましたので。10日間ぐらい行っていたんですけど、朝から晩まで一日中でした。
瀬々 場所は高雄ですか。
夜桜 うーん、場所は分からなかったです、いろんなところで撮影をしました。
瀬々 空港はどこだったんですか。
夜桜 台北です。
瀬々 じゃあ、台北で撮影したんですかね。高雄には高雄空港がありますもんね。
夜桜 高雄って北の方ですよね。
瀬々 いや、高雄は海側の南の方です。
夜桜 ・・・すいません、知識がないもので。どこで撮影したかということまではわからなかったです。
高崎 夜桜さんは、今は、『西瓜』の撮影の頃よりも痩せられたように見えますが、当時は、もう少しふっくらされていましたよね。ツァイ・ミンリャン監督は、その肉感的な感じが非常にほしかったみたいなことを言っていました。イメージ通りで嬉しかった、と。
瀬々 西瓜、ということですか。
高崎 瀬々さん、演出家から見て、夜桜さんの存在感はどうですか。映画で見ていても、強烈ですよね。
瀬々 そうですね、西瓜、って感じですかね。
◆無我夢中だった撮影
高崎 夜桜さんが、撮影最初の日に見せてくれた、体を張ったプロフェッショナル根性が、この映画のトーンを決定付けたと、ツァイ・ミンリャン監督は繰り返し言ってましたよ。
瀬々 そのプロフェッショナル根性というのはどういうものなんですか。
夜桜 演技という演技を私はやったことがなかったんです。AVの世界にも入って間もなかったので、素人同然で。だから演技演技というのではなかったので逆に良かったのかな、と思います。無我夢中、みたいな。演技をするというのではなくて、ありのままの自分自身を出せたところかな、と今は思っています。
瀬々 最初どこから撮影したんですか。
夜桜 最初のシーン、地下道を歩くシーンは最終日に撮影して、初日は、西瓜を股の間に挟んでいるシーンの撮影でした。
瀬々 そのシーンから入ったんですか。
夜桜 そうです。台湾に行ってから台本を読んでいたんですが、最初に西瓜のシーンから始まったので、自分はいったい今どこのシーンを撮っているのか分からなかったです。
瀬々 股の間に西瓜を挟んでて、それをシャオカンがいじるというシーンですよね。でもそれは映画の前半、登場部分ではないんですか。
夜桜 一番初めに、地下道を歩いているシーンがあるんです。そこから入ってくれれば、これからストーリーが始まるんだって分かったと思うんですけど。西瓜を股に挟んで、いじられて、「私、今、何しているんだろう」って。これはどういうストーリー展開になっていくんだろう、って思いました。びっくりしましたね。
瀬々 あー、最初の引き画で歩いているところが登場なんですね。すいません、そこが夜桜さんだとは気づかなかったです。
高崎 ツァイ監督の映画はロングの引いた画が多いから、顔が見えにくいですよね。
瀬々 今考えればそうかなと思うんですけどね。
高崎 そのシーンの撮影のとき、西瓜が股に置いてあるので、下着は見えないから脱がなくてもいいのに、惜しげもなく夜桜さんは脱いでくれた。そのことにツァイ・ミンリャン監督は感動したようですね。
瀬々 ちなみに、全編を通して前張りはしていたんですか。
夜桜 私はしていないです。
瀬々 リー・カンションもしていないんですか。
夜桜 リー・カンションはしていました、一応。
瀬々 ちなみにどんな形ですか。いろいろあるじゃないですか、ハンカチを巻いたりする人や、ガムテープでがっちりとめる人とか。
夜桜 ガムテープですね。
瀬々 ガムテープ系ですか。あれは剥がすのけっこう、痛いですよね。
夜桜 そうですね、痛いと思います。
高崎 ガムテープってわりと、日活ロマンポルノやピンク映画でも使っていますよね。
瀬々 もちろんガムテープだけではないんですけどね、当然。すいません、お下劣な話でして。
高崎 夜桜さんは映画は初めてだったわけですが、きちんとした台本はあったんですか。
夜桜 映画を撮ると聞いた時に、台本の中にはもっと沢山ストーリーが書いてあって、セリフがあって、そこから始めるというイメージがあったんですが。ツァイ・ミンリャン監督の映画ってセリフがすごく少ない、というかほとんどないに近いじゃないですか。その中で演技をしていくというのが私にとっては難しい。これで良いんだろうかと思って、すごく悩んだりもしました。
◆AVは労働だ!
高崎 瀬々さんは『西瓜』をどうご覧になりましたか。ツァイ・ミンリャン監督の場合、本当にセリフが少ないですけど、特に今回、AVの現場ということで、リー・カンションも含めて、全員が過酷に肉体をさらすという感じですよね。
瀬々 ああいうセックス描写のところは、いわゆる演出というのはあるんですかね。ツァイ・ミンリャン監督から、こういう動きをしてくれというようなものが。
夜桜 すごく細かな動きの演出はなかったです。やっぱり性欲の対象として作るものではないので。
瀬々 そうですね、あの映画の中ではAVは労働ですもんね。
夜桜 AVの世界とは全く異なるので、監督にとっては、画面に映る映像として一番どの画が綺麗に見えるかということが重要だったと思います。それに対しては指摘がありました。
こっちに顔が入ってきたほうがいいとか、足が入った方がいいとか、こっちに体を動かして、というような。細かな部分での動きに関してはそこまで言われなくて、あるがままいいっていう感じがしました。
瀬々 シャオカンと夜桜さん演じるAV嬢との間には愛というのはあるんですかね。そういうわけではないんですよね、きっと。
夜桜 おそらく、愛というよりも体と体の関係というものの方が強いと思います。陳湘hさん演じる女性とはやはり心の絆というものが強いと思いますが。
瀬々 そういうのは撮影しながら分かっていったんですか、それとも終わってから分かったんですか。
夜桜 実際に撮っていくうち「そうなんだろうな」っていうのはありました。台本読んだりしても分かったんですけれど。でも、やっぱり「この部分はそういう感情なんだろうな」とか、「その部分はああなんだな」と思うのは一番最後、映画を全部見てからですね。
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