楽日 迷子 西瓜 蔡明亮 ツァイ・ミンリャン   李康生 リー・カンション   監督出演者インタビュー  
   
 

楽日

 
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物語

今日で閉館という台北の古い映画館「福和大戯院」。その楽日(最終日)の巨大なスクリーンにはキン・フー(胡金銓)の傑作『血闘竜門の宿』が映し出されている。
満場の観客席から湧きあがる、喝采の記憶――。しかし今、観客席にあるのはまばらな人影。その中に真剣にスクリーンを見つめる観客の姿があった。往年の映画スター、ミャオ・ティエン(苗天)とシー・チュン(石雋)。彼らは『血闘竜門の宿』の主演男優でもある。万感の思いを込めてスクリーンを見つめるシー・チュンの目に光る涙。

しかしここには、別の「映画ファン」たちも出没していた。観客席を包む闇と光と大音量にまぎれて繰り広げられる男たちの怪しい人間模様。それは「神聖なる集い場」と化した男子トイレの中や、薄暗いバックヤードへと舞台を移し、ますます真剣と滑稽の度合いを増し、孤独に打ちひしがれた男の背後には女幽霊まで現れて…(?!)。
そんな場内の七転八倒をよそに、足の悪い受付係の女(チェン・シャンチー)は、巨大な桃饅頭を温めている。一人で食べるには大きすぎる。いや、一人では食べきれない大きさの饅頭が、彼女には必要だったのだ。意を決して映写室へと向かう。もうずっと二人でこの映画館を運営してきたに違いない映写技師(リー・カンション)に饅頭を届けるが、彼女の最後のプレゼントに込めた思いも彼には届かない。

最終回の上映が終わり、場内を掃き清める受付係の女。彼女が立ち去った後、もう誰も座ることのない客席を不動のカメラが映し出す。永遠の一瞬。二人はいつものように別々に店じまいをして、いつものように別々に帰途に着く。女の気持ちをついに受け止めることができなかった映写技師の手には、桃饅頭を入れた保温器が下げられている。女は降りしきる雨の中を、ひとり歩いてゆく。

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