楽日 迷子 西瓜 蔡明亮 ツァイ・ミンリャン   李康生 リー・カンション   監督出演者インタビュー  
   
 

 
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解説

ヴェネチア映画祭でのこの映画の上映は、ちょっとしたハプニングとして今も語り継がれている。映画の終盤、空っぽの観客席をスクリーン側から捉えた不動のショットが5分間続く。そのとき、観客の反応は真っ二つに分かれた。何かの間違いではないかと、腰を浮かせ、ざわつき始める観客たち、そして感動のあまり息をするのも忘れて静かに涙を流す観客たち――。

この映画は、言うまでもなく映画と映画館、さらには映画を見るという行為への愛の映画である。監督のツァイ・ミンリャンは、台北に実在する古い映画館が閉館すると聞いて、その建物を半年間借り受け、そこで1本の映画を作ることを即決した。そしてキン・フーの『血闘竜門の宿』のプロデューサーに掛け合い、この「閉館する映画館の巨大なスクリーンに最もふさわしい」作品を使用する快諾を得た。

ツァイ・ミンリャンと『血闘竜門の宿』の出会いは、11歳の時。3歳の頃から故郷クチンの映画館に祖父に手を引かれて通っていた少年の心に、この映画は強烈な印象を残した。彼は言う「この映画の中にずっと鳴り響いている笛の音が、私を武侠映画の広漠とした、孤独の世界に誘いました。他の武侠映画では、人が空を飛び、屋根の上を走り…。しかし『血闘竜門の宿』では剣士は広い荒野をただ一人歩いて行く。そこには映画作りにおいて最も困難で孤独な道を歩む決意をしたキン・フー自身の姿が重なるのです」。

『楽日』に登場するミャオ・ティエンも、孫の手を引いている。ミャオ・ティエンは本作までのツァイ・ミンリャンの全作品に出演する、蔡明亮映画にとって欠かせない俳優である。それとともに、彼とリー・カンションにとっては実の父のような存在であった。そして奇しくもこの映画を最後に、05年2月他界した。この映画は彼の初出演作(『血闘竜門の宿』)を包含した遺作となったわけだ。

映画館の中で繰り広げられる滑稽にして哀切な人間模様は、蔡明亮映画の真骨頂だ。しかもこの作品では、「映画館」というもう一人の強烈なキャラクターを得て、そのユーモアと精緻な洞察は純化され、強度を増している。『楽日』はツァイ・ミンリャンのまぎれもない最高傑作であるとともに、かつて幾万の精霊が跋扈した映画の歴史への、哀悼の賛歌である。

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