三田村恭伸氏 メッセージ
ただ雨宿りの為に飛び込んで入った三軒茶屋の古い劇場。
そこで上映していたのは蔡明亮監督のデビュー作「青春神話」でした。
何かの予感と何かの衝動で私は、翌日には台湾の街にいました。
あてもなくさ迷いながら、偶然を重ねて私は蔡明亮監督に
会うことが出来ました。
それから数年、彼から1通のメールが私の携帯に届きました。
「台湾に1ヶ月遊びに来なさい。」
私は何も迷わず、何が待つかも知らず、
全てのスケジュールをキャンセルして台湾に行きました。
そこで待っていたのは「楽日」の製作記者会見でした。
翌日の新聞とワイドショーに、
"普通の日本人青年がある朝、映画の主演俳優に変化した"と。
自分の記事を見て一番驚いたのは私でした(笑)。
撮影の初日はレスリーチャンの訃報。
追悼の意を込めて、蔡明亮は「楽日」の1シーンに
レスリーチャンの写真を掲げました。
そんなたくさんの目に見守られながら撮影は終了したのです。
たくさんの魂と映画に対する熱い愛情が込められた作品に仕上がり、
私は震える思いでした。
後にこの「楽日」はベネツィア映画祭で披露することになり、
素晴らしい賞までいただけて、
私はこの奇妙な偶然と不思議な運命に支えられて、
人生にもう一つの枝が生まれました。
ありふれた毎日を過ごす同世代に何かのメッセージを残すことができたら、私は嬉しく思います。
「楽日」に込められた熱い蔡明亮の、キャストの、スタッフの、
そして私の思いが、この映画の背景にあることを感じてください。
激しく涙が飛び散るくらいの思いがあることを・・・。
「楽日」撮影から時を経て、
私はまた新しい映画との出会いを迎えようとしています。
そして、これからも好奇心と情熱を失わないで走り続けたいって思います。
三田村恭伸
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