映像と音楽の幸福な結婚! 〜〜“カリプソ”〜〜そして―― 松尾潔 ( KC MATSUO for Never Too Much Productions ) |
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この映画では音楽の果たす役割が大きい。誤解を恐れずに言えば、下階の女ヤン・クイメイ、上階の男リー・カンションに次ぐ第3の主演者はグレース・チャンの歌声ではないか、というほどに。 ツァイ・ミンリャンはグレース・チャンの歌が本当に好きなんだなあと思わせる場面は1度や2度ではない。 「Calypso(カリプソ)」は実質的に主題歌的な扱いを受けているだけあって、メジャーな気配に満ちている。映画本編のなかでは閉塞的な状況がややトゥー・マッチ気味に描写された後に流れるだけにそのメジャーな感じはより増幅される。 そして、「TIGER LADY」と「I WANT YOU TO BE MY BABY」。 グレン・ミラー・オーケストラを連想される方も多いであろうビッグ・バンド形式の贅沢な演奏が、映画の舞台となる廃墟寸前の古いマンションと妙なる調和をみせる。 これはもう映像と音楽の幸福な結婚――もしくはCHEMISTRY――と言って差しつかえないだろう。 「A CHO CHA CHA」の歌詞で描かれるふたりの男(リーとジー)の恋のさやあて競争も愉快だし、「お大事に」というオチのつけ方も洒脱。 ぼくは2度の試写で「A CHO CHA CHA」のシークエンスに入るにあたり、全く同じ箇所で笑ってしまった。 計算され尽くしたエンターテインメントをつかさどるツァイ・ミンリャン、その志に応えるヤン・クイメイ、いずれも高いスキルをもった映画人なのだなと痛感した次第。 ただ、個人的には最後に配された「I DON'T CARE WHO YOU ARE」をもって白眉としたい。 詞の超時代的な叙情性も耳にやさしく、スタンダードの趣がつよい。そしてそれはおそらくは『Hole』にも言えることなのである。 (『Hole』サントラのライナーノーツより一部抜粋) ※グレース・チャン 「2000年になっても僕たちをこんなにも癒してくれる、グレース・チャンの歌声に感謝します」とツァイ・ミンリャンが献辞を捧げたグレース・チャン(葛蘭)は、50−60年代にアジア全域で一世を風靡した香港の神話的ポップ・スター。
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