1-俺は二十歳っ! ここは東京六本木! の時代・「GO ! GO ! ゴダール」(!?)の頃
2-ピンク色の館内・ゴダールに萌え萌え
3-次は拳銃を撃ってくれ!・ フランソワ・ミュジーの仕事

4-映画探偵VS音響探偵
5-ゴダールの エレガントな誘惑

ピンク色の館内


菊地 僕は『アワーミュージック』を日仏学院で2回観て、パリの19区にある映画館で1回観たんですけど、色めき立ってましたよ。というのは、「こんなに面白くていいのかしら」っていう、一種の動揺っていうか。すごい通俗的な感動に近いものがあるじゃないですか。分かり易いし。『決別』で「GO ! GO ! ゴダール」だって映画館であれ観せられたら…。

青山 まあ、大変ですよね。

菊地 『カルメンという名の女』だって、裸が出てるからいいようなものの、言ってしまえば大変ですよね。監督が前回の鼎談でも指摘されたように最初の精神病院のシーンとか、細かいことを言ったらキリがないですけど、面白がろうと思って行ったら大変ですよね。

青山 例えば、『カルメン〜』で机とかをパチパチ叩いたりするじゃないですか。あれを面白がれるかどうかっていう(笑)。「ツカミでどう来るか」っていうのが一番ゴダールでは大切で、あそこから飛べるかどうかなんですよね、こっち側が。『カルメン〜』とかは、ああいう形で飛ばしてくれたりするんだけど。いや、毎回僕は行けるんですけど…。

菊地 僕も好きなんですよ。でも、映画館の館内の空気ってあるじゃないですか。『パッション』の時も大騒ぎになったし、ゴダールが作品をつくるたびに復活、復活って言われて、「真価が問われる!」みたいな感じで新作の試写とか公開初日に行くと、館内がちょっと冷えびえしているっていうのが定番だったでしょ。

青山
 そうなんですよね。

菊地 それを何回か経験して、今回久しぶりに新作が来て、『アワーミュージック』と言われて、「どうだろうな」っていうか、もう「今度こそ」っていう気持ちが失せてる訳ですよね。「また冷えびえで、それを楽しむだけだろう」って覚悟して行ったところが、全然冷えてない! 終わった後の場内の空気がピンク色なんですよ。茹でた豚肉みたいな匂いが充満してて。冬場で暖房が効いてたせいもあると思うんですけど、みんな顔なんか紅潮しちゃって「面白い! 単純に!」って感じで感動してる。今までちょっと無かった雰囲気でしたよね。

青山 若干、時事ネタなところもあるからね。それがいいとこなのかもしれないですね。

 


ゴダールに萌え萌え


菊地
 『JLG/自画像』と『映画史』を除くと、今回ゴダールがジャン=リュック・ゴダール役っていうのは初めてですよね。

青山 ああ、初めてですね。

菊地 それまでは監督だとか、ゴダールめいた役で出てたりしてるんですけど、その時はめちゃめちゃ気狂いじみた役だったりするじゃないですか。

青山 ああ、『リア王』のプラギー教授とかね。髪の毛にいっぱいプラグ付けて。

菊地 そうそう。あれ、ヒップホップ・ファッションだったりして。違うと思いますけど。ジャン=ミシェル・フロドンは「人間の愚かさをゴダールは表現してる」って言ってましたね。僕は心の中で「NON!」って言いましたけどね(笑)。

青山 (笑)。

菊地 今回、蓋を開けたら、ジャン=リュック・ゴダール役のゴダールがジャン・レノばりに格好いいんですよね。

青山 ジャン・レノばりに(笑)。あそこ(窓の外に雑誌の看板)に「レオン」って書いてありますが。

菊地 ギリギリの世界ですけどね。いい男だしね。あんまり言うとネタばれになっちゃうんですけど、女に冷たい。ハードボイルドじゃないですか、ご指摘通り。もう前回の鼎談でWebにも載ってることなので言っちゃいますけど、レイモンド・チャンドラーのセリフがありますからね。それまでキリーロフの引用しかしなかったのが、突然レイモンド・チャンドラーの引用ですからね。

青山 カッチョいいですよね。

菊地 通俗的な格好良さですよね。女に冷たい、学生に冷たい、頭は良くて、いい男っていう。実際、ジャン=リュック・ゴダール役とはいいながら、映画撮ったり、上映したり、要するに映画監督としての所作はなくて、学生にレクチャーしてるんですよね。ゴダールがレクチャーしてるシーンが長くて、しかも面白い。

青山 まあ、良いこと言ってるんですけど、ここで。

菊地 すごい真面目に良いこと言ってますよね。「デジタルビデオは世界を救えますか?」って聞かれて、それから先はそれこそネタばれになるので話せませんが、劇場で是非ご覧になって頂きたいなと思いますけど。

青山 そうですね。

菊地
 前作『愛の世紀』を観ると、非常に何というか、インポテンツ的というか…。

青山 はいはい。

菊地
 アンヌ=マリー・ミエヴィルにおそらくギュウギュウに押さえつけられて、若い綺麗な女の子をキャスティングするだけでも大変なんだろうなっていう感じが(しますよね)。

青山 あの『愛の世紀』の主演女優、実はすごい美人なんですよ。カンヌで会ったら。でも映画の中では一度もアップがなくって、あっても暗くて顔がわからない。もったいないと思いましたけど。

菊地 ご存知の通り、ブリジット・バルドーの全裸撮ってる人ですからね。裸がいっぱい出てくる人で、ゲイでもインポでもないんで。むしろ女の人の、特に、ゴダールマニアの間では所見は一致してるところですけど、太もも・ふくらはぎフェチですよね。

青山 ふくらはぎフェチ!

菊地 どう考えても、「太ももとふくらはぎさえあれば、良しっ」みたいな。おっぱいに関してはちょっと冷えびえとしてますけどね。

青山 「何でもいいや」っていう(笑)。

菊地 「おっぱい、何でもいいや」っていう、「ふくらはぎにはウルサイぞ」っていう感じの人なんですけど。『愛の世紀』を観るとまったくそんな気がなくて、一瞬だけ売春婦がパッとコートを脱ぐと下着だっていう唯一エロチックなシーンがあるんですけど、それもどこか冷えびえとしてて。

青山 (笑)。

菊地 その頃、ミエヴィルの映画に出演していて、えーと、邦題は何でしたっけ?

青山 『そして愛に至る』

菊地 『そして愛に至る』か。ゴダールは恐妻家的な役回りなんですけど、本当だろうなっていう。

青山
 ほぼ実話みたいな感じでしょうね。泣いちゃったりしてますよね、奥さんに責められてね。まあ、いろいろ借りがあるんでしょうけどね。

菊地 それにしてもあんなに縛り上げなくてもいいんじゃないって思ってたら、これ(『アワーミュージック』)ではもう全開!

青山 かなり縛りが緩くなってますよね。

菊地 そうですね。極論すると、「もう縛りなくなったんじゃない?」ってくらい、ゴダールのはしゃぎぶり! 自分の役は「いい男」っていう。

青山 モテモテにしか見えないですよね。

菊地 モテモテですよね。女学生、萌え萌えですよね。しかも、指一本触れないですからね。物凄く冷たい。ハードボイルドです。

青山 さりげなくすれ違うだけみたいな。 「誰それに渡しといてくれたまえ」みたいなね。

菊地
 心を込めて学生なりに考えた哲学、人生観、全てを込めたDVDを渡して、一人去ることになります。

青山
 (笑)。

 

 

  


1-俺は二十歳っ! ここは東京六本木! の時代・「GO ! GO ! ゴダール」(!?)の頃
2-ピンク色の館内・ゴダールに萌え萌え
3-次は拳銃を撃ってくれ!・ フランソワ・ミュジーの仕事

4-映画探偵VS音響探偵
5-ゴダールの エレガントな誘惑

 

ガラス張りの店内のピンク色の熱気が、外まで伝わってきました。
第一回爆裂鼎談へ!